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「痛風の患者さんへ【後編】」市民健向講座 2021年度 第1回

 2021年7月16日(金)から8月16日(月)の期間に、複十字病院 膠原病リウマチセンター 谷口敦夫医師が講師を務め、「痛風の患者さんへ」をテーマとして市民健向講座を動画配信形式で開催しました。
ご視聴頂いた皆様、ありがとうございました。

 本記事では、配信内容のうち、後編として以下の項目についてご紹介いたします。
痛風と診断されてしまった方、尿酸値が高く痛風が心配な方など、痛風について知りたい方はぜひご覧ください。

後編

  1. 「尿酸値」を上げる原因
  2. 「アルコール」はどうすればいい?
  3. 「プリン体」はどうすればいい?
  4. 「果糖」に注意
  5. 「尿酸値」によい食品
  6. まとめ

「痛風の患者さんへ【前編】」市民健向講座 2021年度 第1回 はこちら

「尿酸値」を上げる原因


 これからは日常生活のお話をしたいと思います。痛風の患者さんがどのような日常生活を送るのが良いかということですが、最初の方で血液の尿酸値が高い状態が続くと、関節の中に尿酸の塊ができてくるというお話をしました。つまり、尿酸値を上げる原因が痛風の原因になるということです。
 


 尿酸値を上げやすい原因としては「肥満」「体重が増えること」です。それから「アルコール」「プリン体を摂りすぎる」「果糖を摂取し過ぎる」「水分摂取が少ない」
 体重は、肥満がある場合では尿酸値は上がり、減量しますと尿酸値は下がります。痛風になった方でも、肥満があるままでは痛風発作を起こしやすいということも知られています。体重をできるだけ標準体重に持っていっていただくということが大事です。
 水分摂取ですが、尿酸そのものは体の中で尿に溶けて排泄されます。そのため、水分の摂取が少ないと尿の量も減ります。そうすると、尿に排泄される尿酸が減るので、血液中の尿酸値も上がりやすいということになります。できるだけ1.5〜2リットルくらい摂っていただきたいのですが、腎臓や心臓が悪い方は水分摂取が制限されている場合があるので、かかりつけの先生にご相談下さい。

「アルコール」はどうすればいい?


 アルコールには様々な種類がありますが、種類によらず尿酸値を上げてしまいます。後ほどお話ししますが、特にビールはアルコール以外にプリン体を含みます。プリン体は尿酸のもとになるものです。お酒の中では、ビールが最もプリン体が多くなります。
 ビールは特に痛風と関連が深いですが、他の日本酒やワイン、焼酎あるいはウイスキーは、プリン体は少ないもののアルコールを当然含みます。アルコールそのものに尿酸値を上げる作用があるので、アルコール全般に何らかの制限を考える必要があります。1日の量は、ビールであれば中瓶1本、日本酒であれば1合、ワインであればグラス1杯程度、ウイスキーであればダブル1杯が標準の量になります。この中で、ワインは300cc程度であれば尿酸値あるいは痛風に対する影響はあまりないだろうということが分かっています。
 焼酎はどうだろうかとよく聞かれますが、焼酎は20度程度、ウイスキーが40度程度ですので、焼酎を原液で1合というのは多いです。原液で0.4から0.5合程度までにしていただくのがよいのではないかと思います。
 最近はプリン体のないビールも増えていますが、これはどうなのでしょうか。普通のビールよりはマシだとは思いますが、プリン体のないビールでもアルコールは含まれます。通常のビールよりアルコールの量が多く含まれるものもあるため、やはり制限が必要です。
 患者さんによっては、自分は毎日大瓶3本を飲んでいるので、ビールを中瓶1本にするのはとても無理だと言われる方も、実際いらっしゃると思います。そのような方は少しずつ減らしていただき、大瓶を3本飲んでいるのであれば、まずは2本に減らせないかどうかということを考えていただければ良いと思います。

「プリン体」はどうすればいい?


 プリン体は、尿酸のもとになる、原料になるものです。ところが、このプリン体はからだに必要なものであり、実は遺伝子の構成成分でもあるため、細胞には含まれています。つまり、食べ物を一口噛んで、その中に細胞がたくさん含まれれば、プリン体もたくさん含まれるということになります。これとはまた別に、尿酸は肝臓で作られているため、どうしても内臓類はプリン体が多くなります。
 しかし、実際のところプリン体はたくさんの食品に含まれているため、プリン体の摂取制限を極端にしてしまいますと、食事のバランス自体が悪くなり、あまりよくありません。
そこで内臓類、レバーなどは避けていただきたいです。肉類は食べていただいて良いですが、肉類は牛であろうが、豚であろうが、鶏であろうが、食べ過ぎれば尿酸値を上げますし、痛風にもよくありません。
 しかし、食べ過ぎなければ、適量の摂取であれば、かまいません。エビ・カニなどの甲殻類を含む魚介類でも、食べ過ぎなければ大丈夫です。
 


 食品に含まれるプリン体の量は、各食品のグラムあたりで記載されています。例えばかつお節や煮干し、干し椎茸などの干したものは水分が抜けていて軽いです。つまり、重量当たりのプリン体の量は多くなります。でも、これらの食品は出汁として使っていただく分にはたくさん摂取するわけではないため、問題ありません。
 それから、野菜の中でもプリン体をたくさん含むものがあります。エンドウ豆や大豆、ほうれん草、キノコ、カリフラワーなどです。高プリン体含有野菜と言いますが、これらは尿酸値や痛風には影響しないため、いくら摂っていただいても大丈夫です。野菜は食物繊維が豊富で、プリン体の吸収を抑える作用もあります。

「果糖」に注意


 糖の一種である果糖には注意が必要です。これは尿酸値を上げる作用があります。そのため、果汁を含んだジュースは避けていただきたいです。夏は特に、清涼飲料水を飲む機会も多くなると思いますが、このようなものは避けていただくのが良いです。
 お砂糖は、ブドウ糖と果糖からなります。果糖を含むため、やはり、お砂糖を含んだ飲料、甘味飲料を避けていただく必要があります。したがって、夏の水分補給はお茶やミネラルウォーターを中心にお願いできればと思います。
 しかし、自分は果物を食べたいんだという方もいらっしゃると思います。果物はビタミンCも含んでいるため、健康にも良いです。果汁を含んだジュースは避けていただきたいですが、適量の果物を生のまま食べるのであれば、別に問題はありません。果物を摂取するのであればジュースではなく、生の果物で摂取をしていただければと思います。

「尿酸値」によい食品


 これまで尿酸値に悪い、あるいは痛風に悪い食品のお話をしましたが、良い食品もあります。
例えば、乳製品は全般に良く、特に低脂肪であれば尿酸値を下げる作用もあると言われています。チーズのなかでも、カッテージチーズやリコッタチーズ、これらは低脂肪のチーズと言われ、尿酸値あるいは痛風に良いものです。豆類も全般には痛風に良い作用があります。コーヒー、ビタミンCも尿酸値を下げて痛風を起こしにくくする作用があります。ただし、コーヒーやビタミンCは尿路結石がある方には向かないようです。
 このようなものを摂取していただくと良いですが、例えば、枝豆やカッテージチーズが入ったサラダなどをおつまみとして摂れば、お酒を飲む場合にも良いのではないでしょうか。おつまみにもこのような知識を持っていただければ、ひと工夫を加えることができるのではないかと思います。

まとめ


 現在、日本では男性の方で痛風が増えており、少し前までは60万人と言われていたのが、もう100万人を超えるようになっています。痛風は、痛風だけではなく、高血圧・糖尿病・慢性腎臓病・心血管疾患・脳血管疾患・脂質異常症などを合併することが多いと言われています。
 今回は、痛風の患者さんの日常生活として、体重の話、あるいは食生活の話、摂取を避けた方がいい食品もありますが、摂取をした方が良い食品もあること、あるいはお酒の飲み方、おつまみの選び方についてお話ししましたが、運動も大事です。好みの運動を好みの強さで始めていただければ良いですが、筋肉量を落とさないように、慣れてきたら徐々に強度を上げていただければと思います。
 ストレスも尿酸に良くありませんので、散歩、あるいは庭仕事などをして、ストレスの発散も行っていただくと良いのではないかと思います。
 このような生活を行っていただくということは、痛風だけではなく、痛風の合併症にも良いと思われますので、こういった観点からも、今回のお話が、痛風の患者さんの日常生活の何らかの参考になったということであれば幸いに存じます。ありがとうございました。

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