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病院のブログ

胸膜中皮腫について (⑤アスベスト吸入の証左)

胸膜中皮腫について (④中皮腫の診断)

 アスベスト吸入の証明は、アスベスト関連疾患(中皮腫、アスベストによる肺がん、アスベスト肺、びまん性胸膜肥厚)の診断には必須です。これは後々、労働災害(以下労災)の認定により100万円単位、時には1000万円単位の金銭に関わる場合も出てきます。
 労災の認定には、職業歴の聴取が重要です。表1は、アスベスト曝露機会の多い職業の分類です。アスベストの使用禁止により、現在ではアスベストを直接扱う職業はなくなりましたが、中皮腫患者の職業歴を聴取すると、建築業に従事していた方が多いです。また、比較的稀ですが、学校の体育館を仕事場としていた体育教師の中皮腫症例で、労災と認定された報告もあります。

 医学的検査としては、胸膜プラークの存在はアスベスト吸入の強力な証拠になります。胸膜プラークとは、吸入蓄積されたアスベストの刺激により形成された壁側胸膜の肥厚のことです。胸膜の部分的肥厚が斑(まだら)に見えるため、限局性胸膜肥厚斑とも呼ばれます。
 一般の方にはわかりにくいですが、胸部正面写真(図1)では、「→ ←」で挟まれた肺の表面が限局的に肥厚し、白っぽく見えています。断面写真である胸部CT(図2)を撮影すれば、一般の方にも一目瞭然で、「→ ←」で挟まれた肺の表面が限局的に肥厚し、白っぽく見えています。


 図3は胸腔に挿入した内視鏡(胸腔鏡)の所見です。上方が肋骨と肋間筋からなる胸壁(表面は壁側胸膜が覆う)で、左下に横隔膜(これまた表面は壁側胸膜が覆う)があり、横隔膜を覆う壁側胸膜の一部が肥厚し白っぽくなっています。この白っぽい部分が胸膜プラークです。

 断っておきますが、胸膜プラークは病気ではありません。しかし、胸膜プラークがあるということは、アスベストの吸入歴があり、今は無くても今後、肺がんや中皮腫が出てくる可能性が一般的な人より高いということです。プラークのある方は、それだけで、肺がんや中皮腫になりやすいのですから、リスク因子となる喫煙は止めた方がお得です。
 
 より直截的なアスベスト吸入の証左として、肺からの試料の中にアスベストを見つける方法もあります。図4の中央に見える棍棒様の構造体は、気管支に挿入した内視鏡(気管支鏡)から、生理食塩水を気管支肺に流し込み、気管支肺を洗浄して、その洗浄液を回収し、含まれる細胞や成分を調べる気管支肺胞洗浄(BAL)という手法で得た、アスベスト小体です。
 アスベスト小体とは比較的長いアスベスト繊維に生体由来の鉄成分が付着した構造体のことです。アスベストを大量に吸入していた患者では、痰から検出される場合もあります。

 次回は「中皮腫の治療」について述べます。

複十字病院 呼吸器内科
内山 隆司

胸膜中皮腫について (⑥治療予後)はこちら
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