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病院のブログ

呼吸法の大切さを学びましょう!

 呼吸器疾患を有する患者さん、とくにCOPDの患者さんでは「はく息」を大切にして、ゆっくり息をはくことが重要となります。ゆっくり「はく息」を行わないと運動につれて、肺の中ではき残された空気が徐々に増加し、さらなる肺の過膨張(膨らみがつよくなること)を起こします。肺の過膨張が進んだ状況では、息を吸い始めるタイミングでの肺の大きさがすでに大きいため、胸郭の大きさは限られているので「すう息」の量が少なくなり、空気が足りない感じがしてしまいます。これが制限因子となり息切れが強まります。「はく息」の重要性は運動時でも安静時でも同様です。

 息切れが強い人では、首、肩、肋間、背中を中心とした補助呼吸筋が使われその緊張が高まっています。呼吸リハビリの導入ではコンディショニングという操作でこれらの筋緊張をほぐします。私たちのこれまでの研究でも、緊張した補助呼吸筋をリラックスさせ、その筋肉を意識しながら息をすう(吸気筋を使う)ことで、緊張した吸気筋のよい情報が脳に送られ息切れが和らぎ、心地良さが感じられることを米国学会誌に報告しています(J Appl Physiol 1998;84:1487-1491)。

 高齢者の方やCOPD患者さんでは日々の動き、つまり、身体活動性を高めることが重要です。COPD患者さんの治療において身体活動性を維持すること、つまり日常の動きを大切にして生活することは予後の改善につながります。「より元気な状態で長生きができる!」わけです。

 私たちが運動や姿勢を維持した時に働く骨格筋では、急速運動が得意な白色の白筋と持続運動が得意な赤色の赤筋に分けられます。「ヒラメ」(白筋)は海底でじっとしていますが天敵に襲われそうになると急な動きで身を守ります。一方で、「マグロ」(赤筋)は大洋を長時間泳ぎ続けられよう持続力が優れています。このことからもその違いはおわかりいただけると思います。高齢者では白筋が減少してしまい急速な動きに耐えきれず転倒を招きやすくなります。この白筋の減少を抑えるためにも日常の運動やリハビリが大切となります。

 呼吸法を大切にした動きの一つとして太極拳があげられます。その動きは呼吸と連動したもので「はく息」を大切にしながら呼吸とバランスがとれたものです。太極拳は全身の筋肉を動かしますが、白筋の減少を防ぐことで転倒予防効果があることも知られています(JAMA Intern Med 2018;178:1301–1310)。多くの患者さんに、無理なく継続的に身体を動かすことの大切さを感じていただきながら、よりよい呼吸法を身につけていただきたいと思います。

呼吸ケアリハビリセンター 木村 弘