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非結核性抗酸菌症について

非結核性抗酸菌症について

非結核性抗酸菌とは、結核菌とライ菌以外の抗酸菌の総称であり、現在100菌種以上が発見されており、それらの菌種によって起こる感染症のことです。

非結核性抗酸菌は自然環境中の水系・土壌中や家畜などの動物の体内、水道・貯水槽などの給水システムなどに広く生息しており、菌を含んだ埃や水滴を吸入することにより感染すると推定されています。国内でも20菌種を超える感染症が報告されています。そのうち7〜8割ぐらいはMAC(Mycobacterium-avium complex)と呼ばれる菌で占められています。

結核菌は他人への感染性が強いため、患者さまの喀痰から直接菌が検出されると、結核病棟への入院の対象となりますが、非結核性抗酸菌は菌が検出されても他人に感染することはなく、一般病棟あるいは外来にて治療をおこなうこととなります。

どんな人が非結核性抗酸菌にかかりやすいのか

以前は、陳旧性肺結核症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺切除後やじん肺、間質性肺炎などの既存の肺疾患を有した男性に多くみられていました。しかし最近では、過去に基礎疾患のない中年以降の女性の増加が顕著で、なぜ女性に多いのかははっきりとはわかっていません。

非結核性抗酸菌の治療方法

現在結核は一部の多剤耐性結核を除いて多くが治癒を期待できるようになったのに比較して、非結核性抗酸菌症は治療がまだ確立しておりません。結核と類似した病気のため、抗結核薬を含めた3~4種類の薬を用いて治療を行います。(手術を行う場合もあります)。

ただし経過の長い病気で、自然軽快することもあるため、軽症の時には経過観察のみ行うことも少なくありません。当院では以前30年以上経過観察のみで過ごされた方もいらっしゃいます。
治療をするにしても、経過観察するにしても、この病気と長くおつき合いしていこうというゆとりをもって過ごすことが大事だと思います。

肺MAC症 Q&A

文責:複十字病院臨床研究アドバイザー 倉島篤行

このQ&Aは2013年10月26日開かれた第1回肺非結核性抗酸菌症公開市民講座に患者さん代表で話されたIさんの依頼で出来ました。Iさんは, 最近肺MAC症のことはインターネットにも比較的沢山見られるようになりましたが、 断片的であったり、 信頼できるものかどうか不明な情報も数多いと不満を感じており、沢山のQuestionを寄せられました。

第1回公開市民講座で第2回までには完成すると公約いたしましたので、ここに掲載します。もちろん判らないことがまだたくさんある病気なので断言出来ないことが色々ありますし、これからも内容を更新していきたいと思っています。
病気総論(全体像をおおまかにつかむ)

Q1:肺MAC症とは、どんな病気ですか?(原因菌、人にうつらない、進行が遅いなど)
肺MAC症とは結核菌の親戚のような菌でおきる肺の良性の病気です。この菌の名前がMycobacterium avium complexというのでその頭文字を取って「MAC」と呼んでいます。
結核菌は1種類しかないのですが(厳密には牛がかかる牛型結核菌というのもあります)、MACの様な結核菌の親戚は世界中で150種類くらいあります。日本でも20種類くらいはありますが、その中で一番かかる方が多い菌がMACです。
親戚ですからこの菌を顕微鏡で見ると結核菌とそっくりに見えますが、性質はずっと穏やかで、結核のようにどんどん進行し高い熱を出すとか、まわりの人々にもどんどん感染して広がるということは全くありません。だからゆっくりしか進行しないのですが、治療の効果があらわれるのもゆっくりです。結核は原則約6ヶ月間、薬を飲めば完治するのに対し、肺MAC症は3種類の薬を4~5年間くらいは飲み続けることが必要です。軽症の場合には、治療を開始せずに様子をみるだけの場合もありますが、いったん治療を開始したら根気よく続けることが大切です。薬物療法によって進行が抑えられ、肺の状態も徐々に改善されていきます。
Q2:中高年女性に増えているのは、なぜですか?
どのくらいという確かな数字はないのですが、日本と米国では圧倒的に中高年女性の肺MAC症患者が多くなってきていることはいろいろな研究で明らかです。なぜ中高年女性に増えているのか、理由はわかっていません。結核菌は、ほっておくと人から人へどんどん拡がり、治療しないと死ぬ危険も非常に大きいので世界中どこの国でも結核患者が出ればすぐ保健所などに届けて治療がすぐ始まるようになっています。しかし肺MAC症はすぐ命にかかわることもないし、家族内でさえうつる事などないので、どこの国でも正確なこの病気の統計がないのです。
Q3:どんなきっかけで見つかる人が多いですか?
おおよそですが、健診や人間ドックで肺に影があると言われて検査して見つかる方が3割くらい、咳や痰がひどくなってという方が4割くらい、意外に多いのが, 血痰がでたので調べたという方が3割くらいです。
Q4:病気の頻度は? 他のどんな病気と同じくらいと言えますか?
推定で人口10万対約8~9位(2007年で5.7だった)と思われます。
これは他の病気だと例えば虫垂炎とか急性膵炎とかベーチェット病などと凡そ同じレベルです。 つまり稀と言えるほど珍しい病気ではありませんが、高血圧や糖尿病のように多い病気では無い。2007年以降全国的調査がなかったのですが、今年7年ぶりに私たちも加わり全国調査が行われます。
Q5:入院が必要になることもありますか?それは、どんなときですか?
あります。 この病気が見つかったときにそもそも重症で発熱や呼吸困難がひどいとき。血痰や喀血などが続くとき。 治療薬の副作用が激しいときなどですが、入院が必要になるのはごくまれなケースで、ほとんどの患者さんは、外来通院のみで治療を行っています。
Q6:病気の深刻度を他の病気と比較した場合の相対リスクは?
私たちの病院で診断したこの病気の方の中で、死亡された率は年約1%以下です。これは交通事故件数に対する死亡事故0.6%と比べるとやや高いでしょうが、女性癌の1年間あたり死亡率25%などと比べると低い数字です。
Q7:診断はどうなれば確かなのですか?
今は世界中でほぼ同じですが、喀痰の中に2回MAC菌が培養で確認されれば確かです。
結核菌は自然の環境中にはいない菌ですから一度でもでれば確実な診断になりますが、MAC菌は結構そこらにいますので一度でたからと言ってすぐその病気として良いかどうかは問題があります。偶々くっついただけなのかもしれないからです。2回以上ならかなり確かというのは統計学的な検討に基づいています。実際、長い間診ていても1回しか菌が確認できない方は、ほとんど肺MAC症として進行していく事は少ないと思います。
Q8:最近血液検査で肺MAC症の程度が判る検査が出来たそうですが?
大阪市立大学と京都の先生たちが開発した「キャピリアMAC」という検査法で、今まで もこの種の検査法は「マイコドット」とかあったのですが、それに比べるとだいぶ確かそうです。この検査が陽性だと確かに肺MAC症とかなり言えますが、感度はやや低いので陰性だからと言って肺MAC症ではないとは言えません。肺MAC症の経過を十分反映しているかどうかはよくわかっていませんので、この検査の数字に一喜一憂する事はないでしょう。

感染について Q&A

Q1:いったい、なぜ、どこで感染したのか知りたいです。感染源は特定できないのですか?
この菌は結核菌とは違って人の住む環境のどこにでもいるので、特殊な場合を除いて感染源は判りません。特殊な場合というのは24時間風呂でこのフィルターの中に非常に沢山いることが多く、その場合はそこが最も危険ということになります。土壌とこの病気の発病に関係がありそうだという研究がなされていますが、確かなことはまだ言える段階ではありません。
Q2:過労やストレスは発病と関係がありますか?
あまり関係ありません。
Q3:肺の病気は喫煙者に多いと聞きますが、私はタバコを吸ったことがありません。MACは喫煙と関係ありますか?
喫煙ともあまり関係ありません。最近の日本で増えているのは喫煙しない女性の中で の増加が目立っています。
Q4:インターネットで検索すると、シャワーヘッドや温水プール、ジャグジーなどで感染するリスクが高いという記述もありますが、本当ですか?もうプールや温泉には行かないほうがよいのでしょうか?
MAC菌は温水の中に多いので、ある程度は関連がありますが、どの程度かなどはまだ良くわかっていません。
Q5:お風呂場のヌルヌルからMACが検出されたという報告がありますが、清掃が不十分だとMACが増殖するのですか?MACを除菌する方法があれば教えて下さい。
それはバイオフィルムと呼ばれるもので簡単には取れません。例えば消毒用アルコールを用いてハブラシのようなものでゴシゴシこすれば取れるとされていますが、どの程度行えばMAC菌が除菌されるのかなどは確定していません。むしろその際の飛沫などが心配です。一般的に誰にでも勧められるという方法ではまだよくわかっていません。
Q6:人にはうつらないと言われますが、妹も同じ病気です。感染したのでしょうか。あるいは、家の中の環境に問題があるのでしょうか。感染しやすい体質のせい?
例えば結核症の場合、家族内感染は非常に沢山ありますが、肺MAC症が人から人へ直接感染して発病したという確実例は世界中にありません。同じ環境にいた人が皆肺MAC症になるわけでもありません。しかし結核でもそうですが、肺MAC症になりやすい体質というのはありそうで、現在私たちも研究中です。
Q7:感染してから自覚症状が出るまで、どれくらいの潜伏期間がありますか?
これは全く判っていません。MAC菌で作ったツベルクリン反応を使って調べることが幾つかの国で行われましたが成人の30%位はMACに感染していると推定されています。結核菌の場合は感染した人のうち約10%の人が生涯のうちに発病しますが、MAC菌の場合は感染した人のうち何割くらいがいつ発病するのか全く判っていません(ただ、MAC症は進行がとても遅い病気なので、胸部単純X線検査で肺に影がうつる程度になるまでには、感染から最低でも数年はかかっていると考えられます)。
Q8:どうすれば早期発見できますか?
現段階では、肺MAC症は肺のCT検査で最も早く見つかります。

症状(病状)について Q&A

Q1:MAC症では、なぜ咳が出るのですか?
MAC症では気管支の壁や周囲に比較的弱い炎症がずっと長く続くためと思われます。結核でもそういう場合がありますが結核の場合は炎症の程度がずっと強いのですが薬が良く効いて治るのであまり咳のみが目立つということはありません。
Q2:咳が止まらなくて困ったとき、市販の咳止めを飲んでも大丈夫ですか?
大丈夫です。
Q3:血痰が出るのは、なぜですか? 血痰が出ると悲劇的な感じがしますが、重症度と関係がありますか?
やはり気管支の壁や周囲が慢性炎症のため充血してくるのが原因と思われます。病変が1本の気管支だけでも血痰はおきるので、血痰そのものはあまり重症度とは関係ありません。薬が効いてくると炎症が治まるので血痰のでる回数は減ってきます。
しかしMAC症による慢性炎症が続くと気管支の壁が壊れ、そこが気管支拡張という状態になります。気管支拡張があるとそこには痰が溜まりMAC症だけでなく他の菌による炎症も起きやすく、それによる炎症の持続のため、ずっとたってから突然また血痰がおきるという事があります。
Q4:血痰が出ているときは、安静にと言われましたが、なぜですか?
血痰がでているときは肺の中の血管が拡張するような事、つまり運動や熱いお風呂に長くはいるとか、お酒などは避けた方がよいでしょう。
血痰がでた方にその前数日間の間に何か変わったことをしませんでしたか?と効くと一番多いのは庭の草取りです。草取りというのはポカポカ暖かい日差しを背中に浴びてうっすらと汗をかきながら、思った以上に何時間もやります。前屈みになり両腕を使ってという作業を長時間というのが良くないようです。雪かきとかお風呂の掃除もそうです。
Q5:体重が減るのは、なぜですか?食欲が低下するから?MAC菌と闘って消耗するから?通常、どのくらいの期間で何キロ減りますか?
肺MAC症になると体重が減るのはかなり確かです。一部は明らかにMAC菌と戦うので消耗することは確かと思われますが、それだけでは説明がつきがたく、まだよくわかっていません。
Q6:この病気の重症度と、自覚症状は関係がありますか?
おおむね重症ほど自覚症がひどいのは確かです。
Q7:初期、中等度、重症は、何で判断するのですか?
正式な重症度分類というのはまだありませんが、おおむね、胸部単純レントゲンで病気の陰影が片方の一部だけであれば軽症、両側にあれば中等症、両側にあるだけではなくその面積が広いのを重症としています。
Q8:肺の陰とは、具体的に何が映っているのですか?白い部分は肺の機能が低下しているのですか?
そうです。肺MAC症による炎症が白く写り、その部分は肺の機能が低下しています。
Q9:空洞化とは肺に穴が開いた状態ですか? それで呼吸困難になることはありますか?
そうです。これが沢山あると呼吸困難になります。

薬物療法について Q&A

Q1:あまり効果がないと言われながら、大量の薬を処方され、何年も続けなければいけないと言われても、なかなか前向きな気持ちになれません。何を目標に治療をすればよいのですか?
確かに大変です。本当の目標は、薬を止めても再発や悪化がない状態を達成することです。
Q2:現在、自覚症状は軽い咳が出る程度で、日常生活に支障はないので、治療の必要性を感じません。進行がゆっくりであれば、すぐに治療をしなくてもよいのでは?
これはまだ結論が出ていません。私たちは他の病院とも共同で研究中ですが、非常に軽ければ観察のみで様子を見ることは十分あります。
Q3:薬は一生飲み続けなければならないのですか?薬を中断してよいのは、どんなときですか?
これは質問1。の回答になります。
Q4:治療を止めたあとでも再発する人が多いと聞きます。再感染するのですか?それとも、残っていた菌が再び増殖するのですか?
これはまだよくわかっていません。多くの場合再発と思われますが、環境によっては再感染する場合もあります。
Q5:なかには1クールの治療だけで完治する人もいますか?
1クールというのは決まっていませんが、例えばアメリカのガイドラインでは菌が陰性になってから1年間治療したら終わって良いとしています。しかしそれで完治する人はかなり稀です。日本の多くの専門家はアメリカの基準より長く治療した方が結果が良いと考えています。
Q6:なぜ、こんなにたくさんの薬を飲まなければいけないのですか?下手な鉄砲も数打てば当たるということですか?
そうです。現在世の中にMAC菌を完全にやっつける薬剤はないので多数の薬剤(標準的には3種類)を一緒に使わないと1人前の仕事が出来ないのです。
それから大事なことは結核の場合も同様ですが、多数の薬剤を一緒に使っていると非常に長期でも耐性は起きないということがあります。またクラリスロマイシンは少なくとも血液中の濃度が2μ/ml以上にならないとMAC菌には効かないという事が判っていて、つまり大量に服薬しないと効かないのですが、このクラリスロマイシンも単独で服用を続けるとすぐ耐性が出来てしまいます。
Q7:ピロリ菌の除菌で、クラリスロマイシンへの耐性菌が出て、除菌率が下がっていると聞きます。クラリスロマイシンを長期間飲んで、耐性菌が出ないか心配です。別の病気にかかったときに、抗生物質が効かなくなって困ることはありませんか?
確かにそれはありますが、最近はピロリ菌退治にクラリスロマイシン以外の薬剤組み合わせもあります。全体としてクラリスロマイシンは一般の菌に非常に強力な薬剤というわけでは無いので、肺MAC症の方がこの薬剤を長期に服薬し、他の菌への耐性が出来て困るという場面はピロリ菌以外には、あまりありません。
Q8:併用してはいけない薬はありますか?
炎症性疾患ですから、ステロイドなど免疫を抑制するような薬剤は良くありません。最近の問題としては関節リウマチの場合用いる強力な生物学的製剤が問題になります。
Q9:薬の説明書にホルモン薬の効果が減弱化されると書いてありますが、低用量ピルの避妊効果がなくなるということですか?HRT(ホルモン補充療法)も効きにくくなる?
肺MAC症の薬剤の中でリファンピシンという赤い薬剤が他の薬剤へ影響を持っています。効果がなくなるほどかどうかは薬剤にもよりけりで一概には言えません。
Q10:近い将来、MAC症の治療薬が発売される予定はないですか?開発中の薬があれば教えて下さい。
少なくとも5年以内には登場する可能性はありません。5年後登場するならもう試験が始まっているはずですが、現在試験中の薬剤にMAC菌に効果のある薬剤はないのでかなり確かでしょう。しかし今後結核の薬剤は新しく数種類の登場が予想されます。その中にMAC菌にも効く薬剤があるかもしれません。その意味で10年後以内には新たな薬剤が使えるかもしれません。
Q11:海外でも、治療法はまったく同じですか?
基本的に世界中同じです。クラリスロマイシンは, 日本は200mg錠なので800mgという処方が多いのですが外国は500mg錠なので1000mgになります。
Q12:比較的軽い方や初期の方にはエリスロマイシンという薬が使われるようですが何故ですか?
エリスロマイシンという薬剤は、昔からある平凡な価格も安い薬ですが不思議な薬です。最初に注目されたのは、やや昔に「びまん性汎細気管支炎」(DPBと省略します)という大変やっかいな病気がありました。 この病気は日本や韓国、中国に多かったのですが、両方の肺の気管支の細いところ(細気管支という)に炎症が一斉に起きて呼吸困難が進行し、多くの方が40代くらいで命を落とす(5年生存率38%)治療が極めて難しい病気でした。
ところが40年くらい前に、この薬剤の少量(大量ではなく1日400mg位)を長期に服用すると劇的に効く事が判りました。この治療のために今はDPBという病気は世の中から殆ど無くなるくらいの奇跡的な効果です。一般にこの投与方法(エリスロマイシン小量長期投与)はDPBに限らず特に慢性副鼻腔炎が関係する気管支拡張症などに驚くほど効果があります。私たちはエリスロマイシンを、肺MAC症を強く疑えるがまだ確定にならない方や、肺MAC症でも非常に初期の方で軽い気管支拡張症と言える方に投与する事があります。 もちろん肺MAC症が治るわけではありませんが、ほとんどの方で咳や痰が減少します。また肺MAC症への進展を遅らせる効果がありそうです。エリスロマイシンとクラリスロマイシンは同じ系統の薬剤ですが、エリスロマイシン少量を服用した方のMAC菌には、長期でもほとんどクラリスロマイシンへの耐性が生じていません。 しかしこの薬剤で肺MAC症が治るわけでは無いので、やがて3種類の標準的な治療が必要になる時期が来ます。

副作用について Q&A

一般に肺MAC症治療での薬剤副作用が過大に話され、それが広まっていて、むしろそれにより治療を受けた方がよい方まで薬を避けている害の方が大きいように感じま す。仮に100人の肺MAC症の薬による治療を始めたとして、どうしても副作用で薬が飲めなく薬剤治療が不可能な方は、一人いるか、いないかの程度です。

Q1:リファンピシンを服用すると、尿や便がオレンジ色になり、不気味です。なぜ、こんなことになるのですか?(色素に何らかの効果がある?)ずっと続くのですか?尿検査をしたとき異常が出ませんか?
これは薬剤そのもの色で体には害はありません。また尿の検査で問題になることもありません。
Q2:汗や涙もオレンジ色になるのですか? ソフトコンタクトが変色して落ちないと説明書に書いてありますが、1dayタイプにしなければなりませんか?また、服についた汗は洗濯やドライクリーニングで落ちますか?夏に白い服が着られなくなるのですか?
ソフトコンタクトだとそうです。 白い衣服への着色は、通常の洗濯で落ちます。
Q3:エサンブトールに、視力が低下する可能性があるという説明書がついてきて、とても不安です。視力低下した場合、どうなるのですか?(薬を止めるのか、止めたらMACが悪化するのか、視力低下は戻るのか)
一般にエサンブトールによる視力障害は1~3%の方におきるとされていますが内服量と内服期間に左右されます。
結核の治療の場合はエサンブトールの内服期間は初期2ヶ月だけですが肺MAC症の場合はずっと長期間内服します。エサンブトールはその薬自体はMAC菌に効くわけではないのですが、クラリスロマイシンに対する耐性が起きないようにする上で重要な薬剤です。一般には15mg/kg以下だったら視力障害は来ないとされていますが、どうも女性の場合はそれでも視力障害がおきる方が多いように感じますので私はかなり少なめに処方しています。
視力障害は内服してすぐではなく3ないし6ヶ月以降に起き、早く気づいて内服を止めれば回復します。眼科の先生に診て頂けば視力低下がエサンブトールのせいかどうかは判りますので視力低下を感じたら是非眼科を受診してください。
Q4:視力のチェックのために2カ月ごとに眼科で検査を受けるように言われました。視力低下は、そんなに頻繁に起こることなのですか?
内服量にもよりますが、それほど頻繁にすることはないと思います。
Q5:薬を飲み始めたら、口の中に常に苦みがあり、1日じゅう気持ちが悪くて困ります。副作用を軽減する方法はないのでしょうか?これは、ずっと続くのでしょうか。
これは残念ながらやむを得ません。クラリスロマイシンという薬剤自体の苦みで体には害はありません。飲み始めの苦さは次第に減ってくるのが一般的です。クラリスロマイシンは最も重要な薬剤なので止めるわけにはいきません。「良薬は口に苦がし」の典型的な例です。
Q6:以前は大丈夫だったのに、運動すると心臓が激しくドキドキしてつらくなります。薬の副作用でしょうか。
薬の副作用とは思えません。病気のせいで肺活量が少し減っているためと思います。次第に改善するでしょう。
Q7:薬を飲むと、のどが詰まったような感じで胸が重苦しいです。ちなみに、薬はのどにひっかかっていません。これも薬の副作用でしょうか。
特にこの薬がそのような感じを起こすことはないでしょう。沢山の薬を服用する事に対する心理的な反応ではないかと思います。
Q8:夜中に目覚めるようになりました。病気への不安があるからでしょうか。薬の副作用でしょうか。
恐らく質問7。と同じでしょう。
Q9:薬の服用を中止したほうがよい副作用と、我慢して続けたほうがよい副作用の区別を教えてください。
中止した方がよいことが明らかなのは薬に対するアレルギー症状で、具体的にはかゆみや発熱を伴った全身の皮膚発疹です。それ以外は血液検査での異常の場合もありますが一概には言えません。
Q10:朝服用すると具合が悪くなるので、夜寝る前に服用してもよいですか?
OKです。1日1回どこかで服用すればOKです。
Q11:リファンピシンだけ、なぜ朝食前なのですか?飲む順番を間違えたら効かなくなりますか?飲み忘れた場合は、どうすればいいですか?
確かにリファンピシンは空腹時服用の方が吸収は良いので一部の薬局ではそう指導されますが、何年も服用する上で最も重要なことは忘れずに服用継続する事なので私たちは全薬剤を一緒に食後1回を勧めています。多少の吸収の低下よりそちらの方がずっと重要だからです。結核の場合の服薬もそうですね。飲む順番は全く関係ありません。 飲み忘れた場合は忘れてください。 長い人生です。 1回くらい抜けても気にしないでください。

手術について Q&A

Q1:手術するのは、どんな場合ですか?
病変が1箇所に固まっていて、しかも薬剤が効きにくい気管支拡張や空洞などが対象になります。そして手術に耐えうる体力や、肺機能などが条件になります。
Q2:手術で肺の一部を切除すると、肺活量が減りませんか?
確かに肺活量はその分減りますが、若い方は他の肺がまた膨らんできて補ってくれます。また、切除する部分は既にMAC症で壊れているところですから肺の効率はあまり悪化はしません。
Q3:できれば手術は受けたくないのですが、絶対にしなければならないこともあるのですか?
手術しないと確実に余命が短くなると予想される場合や喀血が大量持続する場合などは手術をしたほうが良いでしょう。
Q4:手術は胸腔鏡ですか?それとも開胸ですか?入院期間はどれくらい?
これは病変の部位や既に癒着があるかどうかなどで決まってきます。胃の手術などとちがって翌日からは食事が出来ますので凡そ3週間位でしょうか。
Q5:手術の傷は残りますか?えりの開いた服や水着を着ると目立ちますか?
これも手術の種類によって異なりますが、襟元などに傷が見える場合はまずないでしょう。

日常生活について Q&A

Q1:治療中、日常生活で気をつけることはありますか?
24時間風呂などはしない。園芸で腐葉土などの土埃を浴びないなどの他はなんの制限もありません。一般に特に風邪をひきやすいという事はありませんが、風邪をひくと治ることは治りますが治るまでの期間は明らかに健康な方より長い時間かかるので風邪を引かないように注意しましょう。
Q2:経過観察中、日常生活で気をつけることはありますか?
質問1。 と同じです。風邪の場合は鼻水や咽頭痛が高率にありますが、それらがなくて咳や痰だけが目立ってきたらこの病気が進展している可能性があります。
Q3:今までどおり仕事を続けていても大丈夫ですか?
大丈夫です。またこの病気は人から人へはうつらないので職場でも大丈夫です。
Q4:激しい運動をしても大丈夫ですか?
これは病状の程度によります。 重ければ呼吸が苦しくなります。軽ければかなりの運動をしてもOKです。
Q5:病状が悪化するのは、どんなときですか?悪化していることは自覚症状でわかりますか?
質問2。 と同じです。
Q6:風邪をひかないようにと言われますが、どんなに気をつけていても、ひくことはあると思います。風邪をひくと、病状が悪化するのですか?二次感染に気をつけたい病気は?
一般には、特に軽症であれば風邪にかかると治るのは遅いのですがMAC症そのものにはあまり影響を与えません。ただし、気管支拡張が進行した方では感冒時に合併する二次感染はかなり程度がひどいときもあり一緒にMAC症も広がってしまうことがあります。
Q7:肺によい生活とは? 喫煙者の近くに行かない? きれいな空気の場所に行く? 空気清浄機を使う? 食事との関係は? 吹奏楽者に肺病はいないというのは本当?思い切り息を吐くと、菌が排出される?
空気の良い自然環境は文句なく良いでしょうが、空気清浄機についてはあまりに多くのメーカーがありよくわかっていません。加湿器はヒーターで熱した蒸気が出るものは滅菌されるので安全ですが、超音波加湿器は水をためる容器を十分に洗わないとかえってMAC菌や種々の菌をばらまくことになりかねません。吹奏楽者でも肺の病気になられる方はいますが、比率が低いかどうかは判っていません。菌は喀痰以外の状態で排出されることは先ずないでしょう。

予後について Q&A

Q1:肺MAC症で亡くなることはありますか?どんな場合ですか?(若くても死亡するかどうか)
肺MAC症でなくなる方もいますが多くはありません。複十字病院で309例を5年間追跡した中で肺MAC症による死亡は13例、4.2%でした。
Q2:先生の患者さんで、死亡した人は何人いますか? (何人診ていて、何人死んだか)
私は現在2つの病院で約1200名を診ていますが、この数年間でこの病気で亡くなった方は3名です。
Q3:治療を続けていれば、死ぬことはありませんか?
最初から重症だとどうしてもなくなる方がいます。
Q4:呼吸不全に至るまでには、どんな経過をたどりますか?(苦しんで死ぬの?)
呼吸不全というのは一般的には酸素分圧で60 Torr以下、外来で良く測る酸素飽和度だと約90%以下ですが、そこに至る遙か前から咳や痰が多くて困るでしょう。
Q5:MAC症は進行の遅い病気と言われますが、急激に短期間で悪化することもありますか?
MAC症自体は急速に進行することは先ずありません。しかし時に急速に呼吸困難が起きることもあります。それは肺のパンク=気胸が合併したりするとそうなります。
Q6:肺MAC症にかかると、肺がんや他の肺の病気のリスクが高まることはありますか?
結核は結核既往のある方の方が肺癌などの危険度がやや高いことは判っています。しかし肺MAC症の方が、肺癌発症率が高いというデータはどこにもないと思います。肺MAC症の病変が肺癌に変わることもありません。しかし肺癌なのか肺MAC症なのか区別が困難な画像というのはあります。

代替療法など Q&A

Q1:免疫力(自然免疫)を高めるために、何かしたほうがよいですか?
一般的な健康増強は非常に大切ですが、免疫が弱ければこの病気になるということでは無いので、正直言ってあまり関係ないと思います。 HIV感染のような極度に免疫が低下する非常に特殊な状態では、全身に広がるMAC症になることがありますが、それは通常の肺MAC症とは全く異なる病気で、むしろ肺にはほとんど問題を起こしません。
Q2:友人知人から、シイタケエキス、ラクトフェリン、カロチノイドなどさまざまなサプリメントや健康茶などを薦められていますが、有効なものはありますか?
今までこれが確かに良いという明らかなものはありません。これほどインターネットが発達した世の中で、本当に良いものがあれば、あっという間に広がるはずですが、今までそのようなものはハッキリとはしていません。
Q3:がんの免疫療法はMAC症に応用できませんか?(MAC菌を標的にするワクチンを作って攻撃することはできないか)
ワクチンや、あるいは癌の免疫療法のようにMAC菌に対する免疫的な力を強める療法は理論的には重要ですし、様々な研究が期待されますが、まだよく判っていないことがらだらけです。

最後に

Q1:この病気にかかったことを、どのように受け止めたらよいでしょうか?
医師から診ても不思議な病気です。確かに今のところ根本的になおせる薬はないのですが、そういえば高血圧とか糖尿病でも一度その病気になれば生涯治りません。幸い肺MAC症は、時々ドキッとすることはあっても、痛みや命の危険などは、ほとんどない病気です。完全に治らなくても早くから薬を使えば、あまり困ることなく平均寿命まで元気に過ごせる病気です。1つの病気を大切にすることは命を大切にする事です。太く長くと、欲張らず、細く永く楽しく生きましょう。